はじめに
本稿は、不動産投資の専門メディア「楽待 RAKUMACHI」が公開した動画『【牧野知弘×森知也】日本人は絶滅危惧種/2100年「出生数20万人」の衝撃』の内容をベースに、今後の居住戦略を考察したものです。 動画内では、京都大学経済研究所の森知也教授による最新の人口動態・都市データと、不動産コンサルタントの牧野知弘氏の現場目線による鋭い分析が交わされており、これからの日本の都市構造の激変が浮き彫りにされています。これらを踏まえ、2030年以降に私たちが選ぶべき「失敗しない住まい」の条件を紐解きます。
1. 2030年以降の人口動態と都市の「間抜け化(疎ら化)」
日本の人口減少はすでに始まっていますが、2030年以降はその影響がより目に見える形で現れます。森教授は、人口が減少するからといって「広がった居住エリアが均等に縮んでいくわけではない」と指摘しています [14:13]。
- 「都市の疎ら化(間抜け化)」:日本全国に広がった都市ネットワークの網の目はそのままに、中小都市や地域の間がポツポツと抜けるように消滅していきます [14:22]。
- 必需サービスの喪失:人口が減ると、その規模に応じて特殊性の高い産業や高度な医療から順に撤退します [16:05]。人口3万人程度が「救急病院、高校、産婦人科、スーパー、コンビニ」などの生活必需業種がひと通り揃う境界線とされていますが [19:00]、50年後にはこうした3万人規模の都市の数が4分の1も減少し、都市同士が孤立していきます [19:36]。
2. 東京・大阪・名古屋の「三極」のリアル
「地方が厳しいなら、大都市ならどこでも安心か」というと、そうではありません。動画では、大都市圏の間でも明確な格差(明暗)が生まれることが示されています。
- 東京一極集中の正体:東京圏(1都3県)への人口流入の主役は、18歳〜29歳の「若年層(新卒就職組)」に完全に集中しています [18:29], [25:01]。
- 大阪・名古屋の衰退傾向:かつてはこれら三大都市圏すべてに人が集まっていましたが、現在、新卒(22歳)の転入超過数を見ると、大阪圏や名古屋圏はすでにマイナス(流出超過)に転じています [25:31]。大学で大阪や京都に来た若者も、就職のタイミングで東京に吸い寄せられているのが現状です [25:47]。
- 東京の「純増」ではない:東京の人口自体は増えているように見えますが、日本人の人口は自然減(高齢化による死亡数の増加)のフェーズに入っており、実際の人口増を支えているのは「在留外国人」の増加です [22:20], [23:27]。
3. 不動産市場の二極化と「50年ローン」の罠
現在、東京や大阪のマンション価格は高騰していますが、これは実需(実際に住む人)だけで支えられているのではなく、海外マネーや投資マネーが流入しているためです [28:01]。
牧野氏は、近年登場している「50年住宅ローン」を組んで区分所有マンションを資産として持とうとする買い方に対し、強い警鐘を鳴らしています [00:35], [33:22]。
- 資産価値のゼロ化:50年後、あるいはそれよりずっと早い段階(2030〜2040年代)で、大量相続に伴う空き家や空きマンションが激増し、住宅過剰社会になります [36:45], [37:12]。
- ごく一部の「投資マネーが入り続ける金融商品のような超一等地マンション」を除き、一般的な大都市郊外の物件を含めた多くの住宅は、「ローンを返し終えた頃には資産価値がゼロになっている」可能性が極めて高いとされています [36:07], [39:16]。
【結論】2030年以降、「失敗しない住まい」の条件
データが示す未来は厳しい。だが、先を知っていれば、選択肢はある。
① 住むなら「都市のコア(中心部)」、または利便性の高いエリア
データが示す長期的な縮小トレンドを考えると、医療・商業インフラと雇用が最後まで維持されやすいのは、東京圏をはじめとする主要都市の交通利便性が高いエリアになるでしょう。
地方都市や大阪・名古屋圏であっても、すべての地域がダメになるわけではありません。重要なのは「エリア内の二極化」です。もし地方や地方都市を選択するなら、自治体のインフラが集中する「コア(中心部)」や、生活の質が維持される主要駅周辺を選ぶこと。インフラの維持が難しくなる「外側」のエリアを避ける視点が、10〜20年後の暮らしを守る鍵になります。
② 「資産になるかも」という幻想を手放す
「値上がりするかも」「子供に残せるかも」——その期待で重い住宅ローンを組むのは、50年後に最もリスクの高い賭けになりえます。
大切なのはシンプルで、「今の自分が無理なく払える価格で、暮らしやすさを買う」という割り切りです。家はもはや資産形成の手段ではなく、生活の質に払うコストと捉えた方が、精神的にも財務的にも健全です。
③ 「身軽さ」を戦略として持つ
将来は、誰にも引き取られない空き家・負動産が街にあふれ、住宅の取得コスト自体が暴落するエリアも出てくるはずです。牧野氏が「1人で3つの家を持つ時代が来るかもしれない」と語るように、住まいの選択肢はむしろ増える可能性があります。
今、高値の長期ローンに縛られるよりも、動ける状態を保っておくこと。それが「失敗しない住まい選び」の、もう一つの正解かもしれません。
参考動画: 『【牧野知弘×森知也】日本人は絶滅危惧種/2100年「出生数20万人」の衝撃』(経済メディア「楽待 RAKUMACHI」より)